どんなルールが、どう用いられるべきか -ルールの合理性・相当性-

どんなルールが、どう用いられるべきか -ルールの合理性・相当性-

パリオリンピック直前に、体操選手の違反行為が発覚したことにより不出場となった点について、違反行為があったことばかりがクローズアップされていたように感じます。
この件について、具体的にどういった事実があったのか、というのはわずかの事実しか公表されていないため、その適否等については検討できませんが、そもそも、体操協会の規程にどのような禁止行為に関するがあり、その違反行為についてどのような処罰をされると定められているかについてみていきたいと思います。

1 公益財団法人日本体操協会「日本代表選手・役員行動規範」
体操協会では、日本代表選手の行動規範というものを定めています。
そこでは、ニュースにもなっていたとおり、「日本代表チームとしての活動の場所においては、20歳以上であっても飲酒は禁止する」と書かれています。
この「日本代表チームの活動」というのは、「競技会、合宿、練習、ミーティング、貴社会見、壮行会、表敬訪問、祝賀会等」とされています。
「合宿」と書いてありますが、これが合宿中の練習に限らず、例えば、合宿に付随する移動中も含まれるとは思います。では、このルールは合宿最終日の夜、部屋で一人でお酒を飲むことも禁止しているのでしょうか。合宿が1ヵ月続くのであれば、代表選手は1か月間、1滴もお酒を飲んではいけないという行動制限をかけることを目的としているのでしょうか。

ちなみに、全然別の話ではありますが、この規程では「未成年者の単独行動は禁止する」とも定めています。しかし、これには時期・場所等が何も限定されていません。未成年の選手がコンビニがお菓子を買うことを禁止してはいないとは思いますが、どのようなことを単独行動として禁止しているのか不明確だと言わざるを得ません。

2 公益財団法人日本体操協会倫理規定
体操選手に適用される1のルール等に違反した場合、どのように処分されるかというのは、体操協会の倫理規程に書かれています。
今回の件について、どの条文に基づいて処分されるかは色々な考え方がありえますが、例えば、「本会の諸規程または方針に反し、故意に又は過失に基づき本会の運営を妨害したとき」に該当するため、処分するということが考えられます。

こちらの内容は、「諸規程」つまり他に定めたルールに違反する行為をしたからといって直ちに処分するとはされておらず、「本会の運営を妨害した」という結果が生じることが必要とされています。
違反行為をしたら当然処罰するべきだ、というルールではなく、一定の結果が生じた場合にのみ処罰するということを想定していることが考えられます。

3 2つの問題・・・・ルールがおかしくないか、処分の内容がおかしくないか
巷でいわれている、日本人はルールを守ることにはうるさいが、そのルールが適切かどうかには関心が薄い(ビジネスやスポーツの世界でいえば、諸外国との関係で優位となる、劣位にならないようなルールを作るのが苦手である)、という指摘は、ある程度的を得ているのではないかと感じています。

一方で、実際には、いくつもの法律が不当な人権侵害の内容を含むとして憲法に反する無効なものとされていますし、同様に、スポーツ団体が定めた規則が著しく合理性を欠く場合には無効とされます。時代遅れの校則に基づく学校の処分が、法律上無効とされることもあります。何も考えずにルールを守っていると、不当な不利益を受ける、ということは往々にしてあります。

また、違反があったとしても、どのような処罰をするかは別問題です。
わかりやすい例かわかりませんが、窃盗罪の懲役は最長10年とされていますが、お菓子一つ盗んだ人を10年刑務所に入れていくと、それにかかる・人員・税金や出所者の生活再建の問題から、かえって日本社会の秩序を保つことができなるなるでしょう。
処分の内容のバランスをとる必要があります。

これからは、より事案に応じた適切な対応が必要となってくるかと思います。

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