Bリーグ、選手統一契約書の解説(前半)
Bリーグが作成しているクラブと選手との間の統一契約書(2021年シーズンのもの)の内容を解説します。
なお、Jリーグが作成している統一契約書の内容と同じ内容の部分が多く、Jリーグの統一契約書を元に作成されたものと思われます。
第1条〔誠実義務〕
第2条〔履行義務〕
第3条〔禁止事項〕
第4条〔報酬〕
第5条〔費用の負担〕
第6条〔休暇〕
第7条〔疾病および傷害〕 以上、今回解説
第8条 〔選手の肖像等の使用〕 以下、後半で解説
第9条 〔クラブによる契約解除〕
第10 条 〔選手による契約解除〕
第11 条 〔制 裁〕
第12 条 〔有効期間および更新手続き〕
第13 条 〔修 正〕
第14 条 〔準拠法〕
第15 条 〔紛争の解決〕
第16 条 〔保 管〕
第1条〔誠実義務〕
(1) 選手は、公益財団法人日本バスケットボール協会(以下「協会」という)、
クラブが所属するリーグおよび連盟(以下単に「リーグ」という)およびクラ
ブの諸規程・諸規則を遵守し、本契約を誠実に履行しなければならない。
(2) 選手は、プロ選手として自己の全ての能力を最大限にクラブに提供するため、
常に最善の健康状態の保持および運動能力の維持・向上に努めなければならな
い。
(3) 選手は、プロ選手として公私ともに日本バスケットボール界の模範たるべき
ことを認識し、日本バスケットボールの信望を損なうことのないよう努めなけ
ればならない。
選手がBリーグ等が定めるルールに従わなければならないこと、その他、プロとしてもつべき心構え等について、定められています。
第2条〔履行義務〕
選手は、次の各事項を履行する義務を負う。
① クラブの指定する試合への出場
② クラブの指定するトレーニング、合宿および研修への参加
③ クラブの指定するミーティング、試合の準備に必要な行事への参加
④ クラブにより支給されたユニフォーム一式およびトレーニングウェアの使用
⑤ クラブの指定する医学的検診、注射、予防処置および治療処置への参加
⑥ クラブの指定する広報活動、ファンサービス活動及び社会貢献活動への参加
⑦ 協会から、各カテゴリーの日本代表選手に選出された場合のトレーニング、合宿および試合への参加
⑧ 協会およびリーグの指定するドーピングテストの受検
⑨ 協会およびリーグの指定する薬物検査の受検
⑩ 合宿、遠征等に際してのクラブの指定する交通機関、宿泊施設の利用
⑪ 居住場所に関する事前のクラブの合意の取得
⑫ 副業に関する事前のクラブの同意の取得
⑬ その他クラブが必要と認めた事項
選手が、クラブの指定する試合その他、クラブが指定する活動に参加しなければならないことが定められています。「副業に関する事前のクラブの同意の取得」というのが、例えばYouTube上での活動等まで及ぶとすると、かなり広範に及ぶことになります。
Jリーグの統一契約書と比較すると、「⑨ 協会およびリーグの指定する薬物検査の受検」が追加されており、薬物検査に関して、より厳密な記載ぶりとなっています。
第3条〔禁止事項〕
選手は、次の各事項を行ってはならない。
① クラブ、協会およびリーグの内部事情の部外者への開示
② 試合およびトレーニングに関する事項(試合の戦略・戦術・選手の起用・トレーニングの内容等)の部外者への開示
③ 協会のアンチ・ドーピング規程に違反する行為
④ クラブ、協会およびリーグの承認が得られない広告宣伝・広報活動への参加または関与
⑤ 本契約の義務履行の妨げとなる第三者との契約の締結
⑥ クラブの事前の同意を得ない、第三者の主催するバスケットボールまたはその他のスポーツの試合等への参加
⑦ 試合の結果に影響を与える不正行為への関与
⑧ その他クラブ、協会およびリーグにとって不利益となる行為
選手が、公正に試合参加できるように、内部事情を公開することの禁止といった内容が定められています。
第4条〔報酬〕
クラブは選手に対し、次の報酬を支払う。ただし、当該報酬には、消費税を除く、所得税、住民税その他一切の税金を含むものとする。
(1) 基本報酬
・総額 金___________円( ケ月分)
(月額 金___________円 ただし、_月は__円)
(2) 変動報酬、その他の報酬についてはクラブと選手が別途合意した基準による。
(3) 前2項の報酬は、クラブと選手とが別途合意する支払期日に従って、適用される消費税を加算して、選手の指定する選手名義の銀行口座に振り込んで支払うものとする。
第4条は、報酬の金額等を記載する条項で、原則として毎月支払うことが想定された内容となっています。
第5条〔費用の負担〕
選手がクラブのために旅行する期間の交通費および宿泊費はクラブが負担する。
クラブが選手のための交通費、宿泊費等を負担することが定められています。
第6条〔休暇〕
選手は、競技シーズン終了後に連続して2週間以上の休暇を取得することができる。ただし、選手は、休暇を休養の目的に利用しなければならない。
選手がシーズン終了後に、2週間連続した休暇を取得できることが定められています。
第7条〔疾病および傷害〕
(1) 選手は疾病または傷害に際しては速やかにクラブに通知し、クラブの指示に
従わなければならない。
(2) 本契約の履行に直接起因する選手の疾病または傷害につき、クラブの指定す
る医師が治療ないし療養を必要と認めた場合、その治療に要する費用は、社会
保険の自己負担分に限りクラブが負担する。
(3) 前項の疾病または傷害により、選手が一時的に競技不能となった場合、クラ
ブは、その競技不能の期間中、基本報酬を支払わなければならない。ただし、競技不能の期間中に本契約が期間満了その他の理由により終了したときは、こ
の限りでない。
選手が怪我をした場合には、クラブの指示に従う必要があること等が定められています。
第8条以降の解説は、後半に続きます。
プロ野球選手、元サッカー日本代表選手等の個人・法人の顧問、トラブル相談等を多数取り扱う
著作:「アスリートを活用したマーケティングの広がりとRule40の緩和」(東京2020オリンピック・パラリンピックを巡る法的課題(日本スポーツ法学会編)
・一般社団法人スポーツキャリアアドバイザーズ 代表理事
・トップランナー法律事務所 代表弁護士(東京弁護士会所属)
・日本サッカー登録仲介人
・日本プロ野球選手会公認選手代理人
・日本スポーツ法学会会員