書籍紹介:うつ病とサッカー 元ドイツ代表GKロベルト・エンケの隠された闘いの記録

書籍紹介:うつ病とサッカー 元ドイツ代表GKロベルト・エンケの隠された闘いの記録

書名からして重い本ですが、皆さんに読んでもらいたい本なので、紹介させていただきます。

「うつ病とサッカー 元ドイツ代表GKロベルト・エンケの隠された闘いの記録」
(著者ロナルド・レング、訳者木村浩嗣)

ロベルト・エンケは、元サッカードイツ代表の正ゴールキーパーです。
あまりサッカーに詳しくない方でも、2002年日韓W杯の時のドイツ代表のGKオリバー・カーンを知っている人は多いかと思います。その次の2006年ドイツW杯時のドイツ代表の正GKがカーンのライバルといわれていたイェンス・レーマンで、2010年南アフリカW杯のドイツ代表の正GKになるだろうといわれていたのが、ロベルト・エンケです。

このような超一流の選手がうつ病にかかり、一度は回復しながら、再度発症して自殺に至ってしまう経緯が詳細に記されているのがこの本になります。

この本から読みとれることについて、訳者がまとめている箇所を引用します。
「ドイツ代表という栄光の代償、エリートアスリートすらこうなる、やはりGKは孤独である、メディアとファンの異常な関心が生んだプロサッカー界という怪物、禁欲的で抑圧的なプロフェッショナリズムの解釈・・・。こうした現状を総まとめして、詰まるところは、スポーツ界に蔓延する根性論や強者の理論による”うつ=弱者の証”という歪んだ見方を批判する、というところに落ち着くのかもしれない」

スポーツ選手は、特にトップに近づけば近づくほど、普通の生活をしていては味わうことのないレベルのプレッシャーをうけることになります。自分の一挙手一投足を目の前で数万人が注目し、メディア・ウェブ上を含めれば数億人が目にすることになるというのは、想像のできないレベルです。
一方で、一度うつ病であることを公表してしまうと、選手としての将来に多大な影響が出てしまう現状があり、実際、ロベルト・エンケは2010年ワールドカップに正GKとして参加するという目標等のために、最後まで、うつ病であることを公表しませんでした。

また、ロベルト・エンケの妻や代理人といった身近な人は、うつ病にかかる以前や以後に、たびたび、精神に不調をきたした行動に接してきましたが、サッカーこそ人生であると考えている本人にどう接すればいいのかという点について、苦慮していました。
将棋の棋士でうつ病にかかった方の書籍「うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした1年間」(著者先崎学)の中でも同様に、うつ病にかかった本人にくわえて、その身近な人がうつ病ということを理解しても相当に苦しむ状況が描かれています。

そして、驚くべきことに、ロベルト・エンケは、うつ病の症状が悪化して自殺に至った日のわずか2日前に、ドイツブンデスリーガの試合に先発出場をして、大過なく試合を終えています。そのため、身近な人の中には症状が改善していると感じた人もいました。
このような状況にある選手の周りの人がどのように接し、どのように対応すればいいのか、専門的な医者等のフォローを受ける必要があると感じます。うつ病というのは、個人の頑張り・根性等でどうにかなるレベルの問題でないということをしっかりと認識する必要があります。

メンタルで悩んでいる本人が読むのは難しいかもしれませんが、そういった方の身近で悩んでいる人等には、是非読んでいただきたい本です。

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